タップセカンドは北野武(ビートたけし)氏と一切関係ありません。

正田忠宏

君の瞳に乾杯~映画史に残る名セリフ

2022.10.17

映画史上もっとも有名なセリフは何か?

答えはいろいろありますが、「君の瞳に乾杯」は有力候補の1つだと思います。

もともとのセリフは 

「Here’s looking at you ,kid」

これを翻訳家の高瀬鎮夫さんが

「君の瞳に乾杯」

と意訳したと言われています。

ただこのセリフ、セリフ自体は有名ですが、作品名まで知っている人は案外少ないようです。

 

このセリフが登場したのはマイケル・カーティス監督の「カサブランカ」という作品です。

ちなみにこの作品の主演候補には、ロナルド・レーガン(後の第40代アメリカ大統領)の名前も上がっていました。「東西冷戦終結の立役者」とも言える人物ですが、レーガンがもともと俳優だったことを覚えている人は少なくなりましたね。

 

さて、そんな「カサブランカ」ですが、撮影現場では悩みのタネがありました。

それは「台本が完成していなかった」ということです。

いろいろなシーンの台本がごちゃ混ぜになって断片的に現場に送られてくるため、今撮影しているのがどのシーンなのか、出演者はおろか監督さえ把握していません。

「階段に立っている主人公が、こちらに向かってうなづく」、というト書きだけが送られてきて、よくわからないままま撮影した、というようなこともありました(このカットは、ドイツ軍人の歌う「ラインの護り」(ドイツ軍歌)を、カサブランカ市民の歌う「ラ・マルセイエーズ」(フランス国歌)がかき消す、というシーンで使われました)。

また、ラストシーンの撮影に当たっても、ヒロインのイングリッド・バーグマンが結ばれる相手が、ハンフリー・ボガートなのかポール・ヘンリードなのか決まっていませんでした。それで仕方なく、「両方とも撮影して編集の時に決めた」のがあのラストシーンです。

 

そんなことがありつつも、なんとか作品は完成、1943年に劇場公開され興行的にも大成功をおさめます。

第16回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞を獲得するなど、時代を超えて愛される作品となりました。

 

以上、タップセカンド、正田忠宏でした。